SEKI'S COLUMN

現行消費税の問題点と改善案

関総研代表 関 博

1. はじめに

 物価高が続く中、消費税のあり方について議論が紛糾しています。経営の現場を長年みてきた筆者から見ると、現行の消費税には明確な構造的欠陥があります。

2. 経営と生活を圧迫する5つの問題点

(1) 中小企業を苦しめる、価格転嫁の限界

 消費税は消費者が負担し、事業者は預かって納める間接税です。

 現実は下請け企業にとっては消費税をそのまま転嫁することは容易ではありません。結果、利益を削って自腹を切る構造が発生しています。近年の消費税の滞納の急増が証明しています。データによれば10年前から1.52倍に増えています。

(2) 逆進性の問題

 最大の問題は所得の低い人ほど税負担率が高くなる逆進性です。昨今の物価高は低所得者の生活を直撃しています。これは担税力に応じて課税する税金の基本原則に反します。

(3) 景気に応じた柔軟性の欠如

 ヨーロッパの付加価値税(VAT)は景況に柔軟な運用をしています。日本では、不況でも税収を確保できる財務省には都合のよい安定財源ですが、不況時にはかえって経済の冷え込みを助長する弊害が発生しています。

(4) 輸出還付金と国民感情

 ゼロ税率で輸出商品に対して税が免除され、仕入時の消費税が還付される仕組みは国際課税上正しいのですが、巨額の還付金が支払われている現実は、手元資金に苦しむ中小企業や一般国民の目からは「大企業だけが得している」と不信感を生む要因となっています。

(5) 減税+給付は事務負担大

 食料品税率1%に減税、不足分は給付金支給、という政策は、現場を大混乱に陥れる天下の愚策です。税制の基本はシンプルです。本来なら税率を2%引き下げれば足りる話です。

3. 第二法人税論?

 SNSで「消費税は事業者が納める第二の法人税だから、法人税と消費税を合算して新税を創設すべきだ」という主張が見られます。しかし、私は租税法理論から反対の立場です。

 法人税は所得に課税される直接税であり、消費税は付加価値に課される間接税で、両社は課税対象も根本的に違うからです。特に価格転嫁のメカニズムそのものが崩壊し、赤字企業への課税が固定化されるからです。

4. 現実的な改善案

(1) 税率は一律8%で簡素化

 減税するなら一律10%から8%へ引き下げるのがシンプルで合理的です。複雑な給付付き税額控除や品目ごとの税率変更は現場を混乱させ事務負担を強いることになります。

(2) 連動型の税率運用

 ヨーロッパ諸国のように、景気の動向に応じて不況時には一時的に減税措置を講じて消費を喚起し、上昇局面に至った段階で適正水準に戻す柔軟な運用が求められます。

(3) 中小企業を守る価格転嫁対策

 適正に消費税を価格転嫁できるように公正取引委員会による監視体制の強化が必要です。転嫁に苦しむ中小企業に対しては柔軟な納税猶予の措置を求めます。

(4) 制度の透明性と説明責任

 輸出還付金をはじめとする制度の仕組みについて政府は国民に対して丁寧な説明をする義務があります。

5. むすびにかえて

 今や消費税は国民生活と中小企業の雇用を左右する税制の骨格となっています。目先の不器用な穴埋め対策ではなく、「簡潔・公平・中立」という税の原点に立ち、現場の事業者が健全に利益を残せる税制への根本改革が求められています。