最近、日本からアメリカへ輸出するすべての商品に対して、一律で15%の関税がかかることが決まりました。これによって日本経済がどのような影響を受けるのか、少しわかりやすく整理してみたいと思います。
関税というのは、ある国に商品を輸入する際にかかる“税金”のことです。今回のようにアメリカが関税を高く設定すると、輸入品の値段が上がるため、アメリカ国内ではそれと競争する国産品(アメリカ製)が売れやすくなります。 こうなると、アメリカでは自国の工場が元気になって雇用も増えるかもしれません。実際、日本でも過去に似たようなことが何度か起きてきました。 でも、現実はそう簡単ではありません たとえば、日本の自動車メーカーは、すでにアメリカで25%の高い関税をかけられています。それでも輸出する台数は、去年とほとんど変わっていません。なぜでしょうか? 実は日本のメーカーは、関税の分だけ車の価格を下げて対応しているのです。そのため、アメリカでは車の値段は上がらず、景気も落ち込みません。むしろ、アメリカ政府は関税収入が増えて、貿易赤字も少なくなり、得をしているようにも見えます。 一方で、価格を下げた日本の企業は利益が減ってしまいます。そうなると、取引先である中小企業に「もっと安くして」と圧力がかかり、社員のお給料が上がりにくくなる…という悪循環が心配されます。 つまり、本来はアメリカ国民が負担すべき関税のツケを、実質的には日本の働く人たちが背負う構造になっているのです。
トランプ前大統領は「アメリカは貿易赤字だから悪い。もっとアメリカ製を買え」と主張します。しかし、実際にはアメリカが世界にたくさん商品を買っているのは、自国の「ドル」という通貨が世界の中心になっているからです。 ドルは“安全な通貨”とされ、世界中の国がたくさん持っています。そのため、アメリカは他国よりも有利な条件でお金を借りたり、商品を買ったりすることができているのです。これはアメリカが長年得てきた“通貨の特権”ともいえるものです。 ですから、その特権を使って経済の恩恵を受けていながら、「赤字は不公平だ」と言うのは、少し自分勝手な考え方だと思われても仕方がないのかもしれません。
私が大学を卒業した昭和46年(1971年)、アメリカは「ドルと金を交換しない」と発表し、世界の通貨の仕組みが大きく変わりました。いわゆる“ニクソンショック”です。 あれから50年以上がたち、アメリカは国内の分断も進み、以前のような絶対的な地位ではなくなりつつあります。これからは、ヨーロッパのユーロや、中国の人民元など、複数の通貨が力を持つ「多極化」の時代になるかもしれません。 私たちが願うのは、過去のように国同士が排他的になり、貿易を閉ざし、争いに向かってしまうようなことが再び起こらないことです。日本も、自分たちの立場を冷静に見つめながら、世界としなやかに関わっていけるような姿勢が求められているのではないでしょうか。
最近、日本からアメリカへ輸出するすべての商品に対して、一律で15%の関税がかかることが決まりました。これによって日本経済がどのような影響を受けるのか、少しわかりやすく整理してみたいと思います。
関税ってなに?経済のしくみをやさしく説明すると
関税というのは、ある国に商品を輸入する際にかかる“税金”のことです。今回のようにアメリカが関税を高く設定すると、輸入品の値段が上がるため、アメリカ国内ではそれと競争する国産品(アメリカ製)が売れやすくなります。
こうなると、アメリカでは自国の工場が元気になって雇用も増えるかもしれません。実際、日本でも過去に似たようなことが何度か起きてきました。
でも、現実はそう簡単ではありません たとえば、日本の自動車メーカーは、すでにアメリカで25%の高い関税をかけられています。それでも輸出する台数は、去年とほとんど変わっていません。なぜでしょうか?
実は日本のメーカーは、関税の分だけ車の価格を下げて対応しているのです。そのため、アメリカでは車の値段は上がらず、景気も落ち込みません。むしろ、アメリカ政府は関税収入が増えて、貿易赤字も少なくなり、得をしているようにも見えます。
一方で、価格を下げた日本の企業は利益が減ってしまいます。そうなると、取引先である中小企業に「もっと安くして」と圧力がかかり、社員のお給料が上がりにくくなる…という悪循環が心配されます。
つまり、本来はアメリカ国民が負担すべき関税のツケを、実質的には日本の働く人たちが背負う構造になっているのです。
トランプ氏の考え方の問題点
トランプ前大統領は「アメリカは貿易赤字だから悪い。もっとアメリカ製を買え」と主張します。しかし、実際にはアメリカが世界にたくさん商品を買っているのは、自国の「ドル」という通貨が世界の中心になっているからです。
ドルは“安全な通貨”とされ、世界中の国がたくさん持っています。そのため、アメリカは他国よりも有利な条件でお金を借りたり、商品を買ったりすることができているのです。これはアメリカが長年得てきた“通貨の特権”ともいえるものです。
ですから、その特権を使って経済の恩恵を受けていながら、「赤字は不公平だ」と言うのは、少し自分勝手な考え方だと思われても仕方がないのかもしれません。
これからの世界と日本のあり方
私が大学を卒業した昭和46年(1971年)、アメリカは「ドルと金を交換しない」と発表し、世界の通貨の仕組みが大きく変わりました。いわゆる“ニクソンショック”です。
あれから50年以上がたち、アメリカは国内の分断も進み、以前のような絶対的な地位ではなくなりつつあります。これからは、ヨーロッパのユーロや、中国の人民元など、複数の通貨が力を持つ「多極化」の時代になるかもしれません。
私たちが願うのは、過去のように国同士が排他的になり、貿易を閉ざし、争いに向かってしまうようなことが再び起こらないことです。日本も、自分たちの立場を冷静に見つめながら、世界としなやかに関わっていけるような姿勢が求められているのではないでしょうか。